出張レッスンでよくいただく質問の一つが、「Windowsに最初から入っているMicrosoft Defenderだけで大丈夫なの?ノートン(Norton)やウイルスバスターのような有料のソフトも入れたほうがいいの?」というものです。結論からお伝えすると、多くの方にとってDefenderの防御力は決して見劣りするものではありません。むしろ今、初心者の方が本当に警戒すべきなのは、ウイルスそのものよりも「フィッシング詐欺」「サポート詐欺」「偽の通販サイト」といった、人の心のスキをつく詐欺の手口です。今回は、Defenderと有料ソフトの違いを整理したうえで、実際にどんな詐欺に気をつければよいのかをやさしく解説します。
Microsoft Defenderだけで本当に大丈夫?
セキュリティ機関の調査(AV-Comparatives、2026年)によると、インターネットに接続した状態でウイルスやマルウェアを検出できる割合は、Defenderも有料ソフトもおよそ99.9%とほとんど差がありません。日常的にインターネットの閲覧やメールのやり取りをする程度の使い方であれば、Defenderの基本性能で十分にカバーできるということです。
一方で、インターネットに接続していない状態での検出率はDefenderがやや弱く(約89%)、有料ソフトのほうが高い傾向にあります。ただし、常時ネットに接続して使う一般的な家庭用パソコンでは、この差が実害につながる場面は多くありません。
Defenderだけで十分な方
- 1台のパソコンを、ネット閲覧やメールなど一般的な用途で使っている
- ネットバンキングやオンライン決済はほとんど利用しない
- ソフトは公式サイトやストアなど、安全な場所からのみ入れている
有料ソフトの導入を検討してもよい方
- パソコンとスマートフォンなど、複数の端末をまとめて守りたい
- 家族で何台も端末を使っており、まとめて管理したい
- ネットバンキングや資産運用など、お金に関わる操作を頻繁に行う
- 何かあったときに電話で相談できるサポート窓口が欲しい
有料ソフトの価値は、実は「ウイルスを検出する力の高さ」よりも、スマートフォンにも対応できる、複数台を1つのライセンスでまとめて管理できる、電話サポートが受けられる、といった周辺機能にあります。ウイルス対策そのものだけを比べるなら、Defenderと標準のブラウザ機能(Microsoft Defender SmartScreenやGoogleのセーフブラウジングなど)を正しく有効にしておくことが、まず一番の土台になります。
それより本当に警戒すべきは「詐欺」
実は近年、ソフトの性能だけでは防ぎきれない被害が急増しています。それが、人の不安や焦りにつけこむ「詐欺」の手口です。ここでは、初心者の方が特に陥りやすい3つの危険をご紹介します。
1. フィッシング詐欺
実在する企業や銀行、カード会社を装ったメールやSMSを送りつけ、偽のログインページに誘導して、IDやパスワード、クレジットカード情報を盗み取る手口です。フィッシング対策協議会の報告によると、2026年5月だけで126,061件もの被害報告が寄せられており、楽天カードやPayPayカードなど、クレジットカード・決済サービスをかたるものが被害の中心になっています。
見分けるポイント:
- メールやSMS本文中のリンクは開かず、ブックマークや公式アプリからログインする
- アドレスバーの「https://」の直後から最初の「/」までの部分(ドメイン名)が、本物の企業名と一致しているか確認する
- 「アカウントが停止されます」「至急ご確認ください」など、急がせる文言には一度立ち止まる
- 可能であれば二段階認証(多要素認証)を設定しておく
2. サポート詐欺
「あなたのパソコンはウイルスに感染しています」といった偽の警告画面を表示させ、記載された電話番号に連絡させて、Microsoftのサポート担当者などを装い、遠隔操作ソフトのインストールや金銭の支払いを要求する手口です。IPA(情報処理推進機構)によると、2026年4〜6月に寄せられた相談のうち、このサポート詐欺に関する相談が全体の37.3%を占め、四半期ごとに増加が続いているといいます。
見分けるポイント:
- 本物のWindowsの警告に、電話番号が表示されることは絶対にありません
- 大きな警告音が鳴ったり、電話番号が表示されたりした時点で、詐欺だと判断してよい
- 画面が固まったように見えても、あわてず電話をかけない(パソコンを再起動すれば多くの場合は消えます)
もし電話をかけてしまい、遠隔操作ソフトを入れてしまった場合は、すぐにWi-Fiを切ってネットワークを遮断し、別の端末からパスワードを変更、必要であればパソコンの初期化やカード会社への連絡も検討してください。
3. 偽の通販サイト(偽ECサイト)
実在する通販サイトのロゴや商品写真を無断で使い、極端に安い価格で商品を掲載する偽サイトです。国民生活センターには、「注文したのに商品が届かない」「届いた商品が偽物だった」といった相談が多数寄せられています。
見分けるポイント:
- 「特定商取引法に基づく表記」に、会社名・住所・電話番号がきちんと記載されているか確認する
- 相場からかけ離れて安すぎる価格には注意する
- 支払い方法が銀行振込しか選べない場合は特に警戒する
- 少しでも不安を感じたら、消費者ホットライン「188(いやや!)」に相談する
まとめ
Defenderと有料アンチウイルスの「ウイルスを検出する力」自体には、実はそれほど大きな差はありません。複数端末をまとめて管理したい、電話サポートが欲しいといったニーズがなければ、まずはDefenderと標準のブラウザ機能をきちんと有効にしておくことが基本の土台になります。
そのうえで本当に大切なのは、今回ご紹介したフィッシング詐欺・サポート詐欺・偽通販サイトのような、ソフトだけでは防ぎきれない「詐欺の手口」を知っておくことです。「これって大丈夫かな?」と迷う画面に出会ったときは、ご自宅のパソコンやスマホを一緒に確認しながらご説明することもできますので、出張レッスンでお気軽にご相談ください。

